興國高校は高校サッカークラスタ界では非常に有名ですが、超強豪校・名門校と比べると興國高校はまだまだ全国区にはなり切れていません。
興國高校が全国の舞台に立ったのは唯一、第98回(2019年度)高校サッカー選手権だけです。
しかしながら、興國高校は毎年プロを輩出しており、ここ10年で27人ものJリーガーを誕生させています。
この人数、めちゃめちゃすごくないですか?
高校サッカーのラスボス的存在である青森山田高校も毎年プロを輩出していますが、この人数には到底及びません。
興國からプロへの道筋。
そこには興國高校サッカー部監督の育成に懸ける情熱や仕組みがありました。
プロを目指すお子さん、そしてその親御さんはぜひこの本を手に取ってみましょう。
プロにする魔法は書かれていませんが、プロにする方法がこの本には書かれています。
本書データ
タイトル | 興國高校サッカー部内野流『諦めない育成』 |
サブタイトル | プロにする魔法はないけど方法はある。 |
著者 | 内野智章(興國高校サッカー部監督) |
出版 | 竹書房 |
発刊 | 2022年11月 |
目次
第1章 興國からプロになった選手たち
第2章 興國のプレーモデル
第3章 ポジションごとに求める能力
第4章 プロを育成する興國式トレーニング
第5章 興國からプロが生まれる背景
第6章 Jリーガーインタビュー
書評
まずは高校野球の話から。
現在の高校野球において頂点に位置しているのは大阪桐蔭であることに異論はないでしょう。
その大阪桐蔭の監督のコメントとして「甲子園で勝つためにやっているのであって、プロになるためにやっているのではない。」いうネット記事を見て少し違和感を覚えたことも、、。
高校生の部活は教育の一環であり、育成が主であるというのが本来あるべき姿なんじゃないの?
そしてこの本の話。
著者である興國高校サッカー部の内野監督は「育成年代で大事なのは、大会の勝ち負けではない。」という信念を持っており「育成>勝利」という方針が明確である。
それは本書の至るところから感じられる。
そして興國からプロが出る要因は何なのか?
それは「選手へのフットボールへの理解の浸透」があげられる。
戦術の理解と言った方が分かりやすいだろう。
中学年代では技術が優れていて無双していた選手も、高校年代ではフィジカル面で一気に強度があがるため、テクニックのみでは太刀打ち出来なくなる選手も少なくない。
年代が上がるにつれて、相手のシステムやピッチ内の局面に応じてどのようにポジションをとり、どのように動くかという戦術的な理解が非常に重要になってくる。
興國ではこの法則を体系化しており「戦術コード」としてチーム内で徹底的に共有する。
この戦術の理解が「フットボールへの理解」ということだ。
そして、興國はポジションごとに求める能力を定めている。
プレーモデルがしっかりしているからこそ必要な能力が明確になる。
つまり到達すべき能力ラインがあることによって、選手もそこを目指しやすくなる。
Jリーグユースに所属しても、毎年トップに上がれるのは非常に狭き門。
然しながら興國の育成環境でしっかり伸びることができれば、全てのJリーグチームが対象となり、プロになれる確率は高くなる。
とにかく考え方、方針が一つ一つが非常にロジカルであるため、納得感が半端ない。
さらに、プロ排出については大阪という地理的環境もあるという。
関西にはJリーグが4チームしかなく、サッカー人口の割合にはJ下部アカデミーに入る子が少ない。
つまり、残念ながらアカデミーに入れないような年代トップ選手層が、興國に興味を持ってくれるという流れがあるわけだ。
今や海外で活躍する古橋亨梧も興國出身で、一気に知名度を上げたことから興國を志望する学生も増えたという。
また、指導者が報われる仕組みに言及しているのも納得である。
高卒でJリーガーとなった場合、育成金として「在籍年数×30万円(J1の場合)」が支払われるが、これが適正なのかと疑問を呈する。
確かに育成年代の監督コーチ業だけで生活するのは厳しい。
しかし、この部分を変えていかないと育成の裾野が広がらず、ひいては日本サッカー界の将来に関わる問題となってくることは自明の理だ。
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