おすすめの戦術に関するサッカー本の紹介です。
今、欧州でもっとも洗練されたチームはどこだろうか?という問いに対して、「マンチェスターシティ」と答える人がもっとも多いのではないでしょうか?
いや、確かにマンチェスターシティは2008年にUAEのアブダビ・ユナイテッド・グループにオーナーチェンジしてから、その資金力を背景に急速に力を伸ばし、欧州トップクラスの実績を付けていることは事実ですが、そのマンチェスターシティの前に「ペップ・グアルディオラが率いる」という枕詞が付くことを付言しておきたいと思います。
ペップ・グアルディオラの存在は、それ以前とそれ以後に分かれるくらいサッカーシーンに大きな衝撃をもたらせました。
その類まれなる知将のゲームモデルを「図解を多用して、具体的に解説した」内容が本書の特徴です。
そして、読後には、ショートパスの連続で相手ゴールへ向かっていくというスタイルを通して、「スペースを支配し、自在に操る」という概念への理解が深まっているかを確かめるべく、マンチェスターシティの試合をすぐ観たくなるようなる気分にさせてくれました。
本書データ
タイトル | ポジショナルフットボール教典 |
サブタイトル | ペップ・グアルディオラが実践する支配的ゲームモデル |
著者 | リー・スコット |
監修 | 龍岡 歩 |
出版社 | KANZEN |
発刊 | 2020年4月30日 |
目次
- バックラインを起点としたプレー
- サイドバックの役割
- フェルナンジーニョの役割
- オーバーロードとアイソレート
- プレッシング
- パスコースのカットとコンパクトな守備
- 「10番」役と「8番」
- カイル・ウォーカー
- ジョン・ストーンズ
- アイメリク・ラポルテ
- ダヴィド・シルヴァ
- レロイ・サネ
- ケヴィン・デ・ブライネ
- ベルナルド・シルヴァ
- ラヒーム・スターリング
- ゴールの解剖学
書評
この書籍のもっとも秀逸な点は、ペップ・グアルディオラのゲームモデルや戦術を、非常に平易な言葉で説明しているところ。
戦術系の書籍は往々にして専門用語多用化傾向があり、すんなり理解ができないこともありますが、この本は全く違う。
決して難解な書籍ではないです。
著者は著名な戦術分析サイト(Total Football Analysis)のリードアナリストであり、戦術の言語化に長けているという点もありますが、そもそもプロローグで著者は以下のように述べています。
「戦術的コンセプトやトレンドの考え方は決してそれほど複雑なものではないことを人々に伝えたいという思いだった。サッカーのこういった部分を取り巻く言葉を単純化し、興味を持ちながらもどこからどうやって理解を始めればいいのかがわからないすべての人々に入り口を提供したいと考えていた。」
まさに著者のマニフェスト通り、図解を多用し、且つ専門用語をかみ砕きながらの説明は、本書のタイトルにあるように「教典」と言ってよいでしょう。
前半は、ペップ・グアルディオラの戦術の側面にフォーカスし、後半はマンチェスターシティの核となる選手達がその戦術にどのようにフィットし、対応しているかを詳述します。
「ポジショナルプレー」という言葉がサッカー戦術界隈にあります。
これはなかなか説明が難しいところですが、誤解を恐れず簡潔に言えば、「適切なポジションをとって優位性を作り、ゲームを支配していこうという概念」です。
そして、それはペップが掲げるサッカーでもあります。
その理解を深めるには最良の一冊かと思います。
そしてマンチェスターシティファンには「あるある」的に楽しめる内容だと思います。
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