前節(第5節)、東京ヴェルディはアウェイの地で対戦したアルビレックス新潟戦で、歴史的な大敗を喫してしまいました。
攻撃意識が感じられない前線、中盤での中途半端なパスミス、守備崩壊と、7失点無得点で終わった結果は、一部のサポーター間で永井監督の解任論を招くものに発展。
前々節(第4節)のツエーゲン金沢戦も、「小池純輝」によって先制ゴールを早々に奪ったにもかかわらず、その後に4点を失って敗戦していることもあり、この第6節水戸ホーリーホック戦は、永井監督にとって何としても「勝たなければならない試合」だったということは言うまでありません。
Match Information.
東京ヴェルディ vs 水戸ホーリーホック
明治安田生命J2リーグ 第6節
@味の素スタジアム
2021年4月4日(日)15時00分 Kick Off.
試合結果
私的戦術分析・マッチレビュー
-前節から永井監督がどう修正してくるのかがポイントですが、その前に、まずはスターティングメンバーの確認をお願いします。
東京ヴェルディのシステムはいつも通りの【4-3-3】でした。
前節第5節の金沢戦後に「富澤清太郎」から『平君も途中まで練習に参加していましたが、色々なチームの事情もあっての欠場という形になりました。』とコメントがあったため、何かチーム内で確執があったのではないかとの憶測もありましたが、杞憂に終わったようです。
今節「平智広」はしっかりとスタメン復帰しました。
-水戸ホーリーホックのシステムは?
水戸ホーリーホックは【4-1-2-3】でしたが、【4-1-4-1】に近い感じも受けました。
トップの「中山仁斗」はフィジカルもあり、ポストプレーにも長けていて「THEフォワードタイプ」。
再三攻撃の起点となっていました。
-それでは今節における東京ヴェルディの修正点をお願いします。
守備面をしっかり強化しようという意図が見て取れました。
前節に7失点という大量失点を喫してしまいましたので、守備面で以下2つのポイントを修正していたと思います。
センターバックを前節の「富澤清太郎」と「馬場晴也」から「平智広」「加藤弘堅」に2枚とも変更しました。
「富澤清太郎」はやはりピークアウトした感が否めず、守備を全面的に任せるには「馬場晴也」はまだ経験値が足りないという考えがあったと思います。
東京ヴェルディの攻撃時の特徴に可変システムがあげられます。
(1)左サイドバックのワイドストライカー化
良く見られるのが、左サイドバックを高い位置まで押し上げ、センターバックがスライドすることで最終ラインを3枚にするパターン。
システムでいうと【3-1-2-4】になります。
(2)若狭ロール
右サイドバックに「若狭大志」が入る際に見られるパターンですが、ボランチの位置に移動して、中盤で数的優位を作ります。
いわゆる偽サイドバックで一種で、マンチェスターシティの「ジョアン・カンセロ」選手の動き(カンセロロール)に準えて「若狭ロール」と勝手に呼んでいます。
(3)偽センターバック
さらに「加藤弘堅」がセンターバックに入った場合は、偽センターバックが発動します。
「加藤弘堅」がひとつ前のラインにあがり、ボランチを担うことでこちらも中盤の数的優位を確保する動きです。
このパターンでわかるのが、いずれも「最終ラインを3枚としている」ということです。
-最終ラインを3枚とすることで何が起きるのでしょうか?
最終ラインを3枚にしていることで「被カウンター時に非常に脆い守備陣形」になります。
前節アルビレックス新潟戦も1・3・4・5失点目は被カウンターによる失点でした。
攻撃時に可変して前がかりのシステムを構築すると、被カウンター時の局面では3バックでは数的同数または数的不利に陥り、失点につながってしまうというパターンでした。
-今節はこの点、どう改善されたのでしょう?
攻撃時も最終ラインは4枚のままを維持していることが多かったと思いました。
左サイドバックの「福村貴幸」が上がることも、「若狭大志」が若狭ロールを発動することも、「加藤弘堅」が偽センターバックとなることも、前節よりは多くなかったと思います。
つまり、攻撃時の可変システムを採用せず、守備ラインをしっかり作って「カウンターではやられない」という戦術面の統一した意図があったものと思います。
-失点もありましたが?
この直前に東京ヴェルディは水戸ホーリーホックのゴールに迫っていました。
後方からのロングボールを「小池純輝」が受けてタメを作ることで、この時は「福村貴幸」と「若狭大志」の両方が「同時に上がってしまっていた」ことが致命的になりました。
この攻撃は実らなかったのですが、そこから水戸のカウンターが発動され、水戸のトップを務める「中山仁斗」に楔が入ると、きっちり収めて、右サイドから上がってきた「奥田晃也」にあっさりと押し込まれてしまいました。
カウンター対策をしていた中での失点が悔やまれます。
-攻撃面は如何でしょうか?
初スタメンを飾った「佐藤凌我」が2得点と、新たなエース誕生を感じさせてくれました。
「佐藤凌我」が明治大学時代から全日本大学サッカー選手権大会で得点王(2019年)に輝くなど、ストライカーとしての実績は十分な選手です。
ポジションはフリーマンとなる位置でしたが、特徴的だったのは「佐藤凌我」がフリーマンの動きをしていないことでした。
下がってボールを受けるのではなく、常にディフェンスライン際に立ち、背後を狙う動きを繰り返し、ゴールを狙う意識が高く垣間見ることが出来ました。
先制点も縦パスを頭で受けて「佐藤優平」の折り返しをオフサイドギリギリで裏抜けして決めたゴールでした。
サッカーはゴールを決めないと勝利できないという当たり前の原則がありますが、「佐藤凌我」の存在は、ゴール前に常に人がいることの重要性を教えてくれたと思います。
何よりも勝利が必要であった永井監督の采配が光ったところでした。
-その他トピックスはありますでしょうか?
「梶川諒太」に代わって入った「石浦大雅」は上手く流れを変えることができる選手であることを証明したと思います。
ユース時代から「森田晃樹」を彷彿させるような期待のレフティーですが、投入直後から縦に走らせるスルーパスを頻繁にトライし、膠着状態に陥っていた東京ヴェルディにテンポと速さを与えました。
また、東京ヴェルディの両ワイドである「小池純輝」と「山下諒也」はやはり武器だと思いましたね。
「石浦大雅」から繰り出されるスルーパスに反応する「山下諒也」のスピードは相手に十分脅威を与えていましたし、大外からゴールに向かうドリブルを仕掛ける「小池純輝」もDFにとって嫌な存在だったはずです。
-まだ何か言いたいことありそうですね・・・?
少しだけお時間ください。
守備時は【4-3-3】の布陣から「山下諒也」と「小池純輝」が下がり、「佐藤凌我」と「佐藤優平」がツートップとなる【4-4-2】のシステムとなります。
水戸のビルドアップ時にツートップである「佐藤凌我」と「佐藤優平」がファーストプレスに行きますが、「佐藤優平」がきちんとプレスの方向を考えてハメに行こうという指示を繰り返し出していたのが印象的でした。
例えば「佐藤凌我」が左CBにプレスを掛け、「佐藤優平」は右CBに「右から」プレスを掛けていくことで左サイドにパスを誘導して嵌めるということをしっかりと試みていました。
前節はプレスの約束事もあいまいな印象がありましたので、この点も戦術面の修正を施したものと思います。
-だいぶ長くなっているのでそろそろいいですか?いいかげん総括をお願いします。
幸先よく先制した後に、被カウンターで追いつかれた際は「またもや?」と思いましたが、攻撃時におけるゴールへの意識、守備時おける約束事は何とか最後まで修正されていたと思いました。
そして、初スタメンで2得点の活躍を見せた「佐藤凌我」は本当に素晴らしかったと思います。
連敗、そして大敗による暗い雰囲気を吹き飛ばしてくれました。
この日は間違いなく「佐藤凌我の日」でした。
余談)
顔も端正なのでヒーロー感が半端ないです。
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