さて、プレミアリーグでは絶好調で無敗をキープしているリバプールですが、CLではグループリーグでナポリに1分1敗と「らしくない」結果を強いられました。
CLのレベルの高さの証明と言っていいでしょう。そしてこの決勝トーナメント。
初戦はD組2位のアトレティコ・マドリーとの対戦となりましたが、シメオネ率いる手ごわい相手に、手堅く守られて敗戦となりました。
この敗因は、、、。それでは私的戦術分析・マッチレビューです。
Match Information.
チャンピオンズリーグ 決勝トーナメント ファーストレグ
アトレティコ・マドリー vs リバプール
@エスタディオ・ワンダ・メトロポリターノ
2020年2月18日(火)
29時00分 Kick Off.
試合結果
■Result
アトレティコ・マドリー 1-0 リバプール
■得点
アトレティコ・マドリー/
4分 サウール
■交代
アトレティコ・マドリー/
46分 レマル → ジョレンテ
70分 モラタ → ヴィトロ
77分 コレア → ジェゴゴスタ
リバプール/
46分 マネ → オリギ
72分 サラー → チェンバレン
80分 ヘンダーソン → ミルナー
私的戦術分析・マッチレビュー
まずはフォーメーションの確認から。
リバプールのフォーメーションの変わらず【4-3-3】。
スタメン構成は以下の通りで、ベストメンバーが名を連ねます。
アリソン(GK)、アーノルド(右SB)、ゴメス(CB)、ファンダイク(CB)、ロバートソン(左SB)、ファビーニョ(アンカー)、ヘンダーソン(IH)、ワイナルドゥム(IH)、マネ(左WG)、フィルミーノ(CF)、サラー(右WG)
直近プレミアリーグのノリッジ戦ではベンチ外の南野拓実。この試合はベンチ入りしました。
一方、アトレティコ・マドリーは【4-4-2】のフォーメーション。
オブラク(GK)、ヴルサリコ(右SB)、フェリペ(CB)、サヴィッチ(CB)、ロディ(左SB)、コケ(右SH)、サウール(CH)、トーマス(CH)、レマル(右SH)、モラタ(FW)、コレア(FW)がスタメンとしてピッチに立ちます。
早々に決まったアトレティコのゲームプラン
アトレティコのホームであるワンダ・メトロポリターノは、昨季のチャンピオンズリーグファイナルの舞台でもありました。
ここでビッグイヤーを掲げたリバプールにとって縁起のよいスタジアムであったと思いますが、開始早々に出鼻を挫かれました。
キックオフ直後は落ち着かないゲーム展開になりがちですが、この試合も同様、ゲームの流れが決まる前の前半4分。
右CKを得たアトレティコは、コケが入れたボールがファビーニョの足に当たり、ゴール前にこぼれたボールをサウールに落ち着いて押し込まれてしまい、先制を許す形となりました。
この得点でアトレティコのゲームプランは固まったと思います。
CLでは「ホームゲームで失点しないこと」が何よりも重要になりますので、守りを優先しつつ戦うことが定石となりますが、早々に先制点を得たアトレティコは「後はひたすら守ろうぜ!俺たち守り強かったはずだし!」的な共通認識が芽生えたことは想像に難くありません。
元々堅守として定評あるアトレティコにとって理想の入りでした。
そしてそれ以降、リバプールはアトレティコの固い壁に阻まれ続けてしまいます。
ブロックを形成した相手に対するリバプールの戦術
主だった戦術は3つあります。
一つ目はCBからのロングフィードによって相手最終ラインの裏をとる方策。
ファンダイクはワンステップキックで精度の高いボールが蹴れるので、サラー、マネの一瞬の動きを逃さず裏へボールを供給することが出来ます。
この仕掛けによって、ラインを下げて中盤を間延びさせるという効果も期待出来ます。
この試合では、ゴメスからのフィード、クロスも目立っていました。
世界最高のCBと組むことでゴメスも着実に進化していることが伺えます。
2つ目は、両サイドバックによるサイドチェンジ。
アーノルドもロバートソンもパンチのある低弾道の早いボールを蹴れるので、時間をかけずに反対側のスペースを突くことでチャンスを生み出します。
3つ目は、スペースを作るためのポジションチェンジ。
リバプールは頻繁にポジションチェンジを行いますが、いずれもスペースを作り出すことを目的としています。
13分のシーンでは、フィルミーノ、サラー、ヘンダーソン、アーノルドがスペースを突くような複合的なポジションチェンジからチャンスを作る場面があり、リバプールらしい攻撃であったと思います。
- フィルミーノが中盤に下がる
- そのスペースにサラーが入り込む
- サラーのスペースにヘンダーソンが走り込こみ
- アードルドがヘンダーソンへのパス→レイオフからクロス
上記3つの崩し方をリバプールは持っており、この試合も仕掛けようとはしていましたが、うまく嵌らず。次は、これに対するアトレンティコの守備を考察してみたいと思います。
アトレティコの4局面の話と守備への考察
■攻撃時
攻撃時は左サイドを攻略することを意識していたと思います。
ファンダイクがいる右サイドよりも、攻略しやすさを選択するは当然のことで、ゴメスと高い位置を取るアーノルドの裏を狙う動きが見られました。
オフサイドにはなりましたが、ゴメスとアーノルドの位置取りが悪く、モラタに裏を取られてあわや、という場面も。
■ネガティブトランジション時(攻→守の切り替え)
ネガトラ時は即プレスを掛け、奪えないとわかると攻撃を遅らせながら早々とブロック形成を図りに行きます。
■ポジティブトランジション時(守→攻の切り替え)
ボール奪取の瞬間から周囲の連動した動きが秀逸。縦への動きを意識したショートパスで、ツートップに早めに預ける速攻スタイルを取っていました。
■守備時
守備時は自陣にて【4-4-2】で強度の高いブロックを形成します。
リバプールのビルドアップはファビーニョ(場合によってはヘンダーソン)が落ちてきて3人のパス交換から始まりますが、これ対してモラタとコレアはハイプレスを仕掛けることはせず、ブロックの外では自由にパス交換を許す一方で、リバプールのインサイドハーフ(ワイナルデゥムとヘンダーソン)をカバーシャドウしたポジションングによって中へ侵入させないことを徹底していました。
ツートップで相手CB2人、下りてきたファビーニョ、インサイドハーフ2人の計5人をケアする非常に効果的なプレス。
また、アトレティコのブロックはコンパクトにまとまって、且つかなり引いた位置で形成していたため、ファンダイクから裏を取るようなロングフィードの対策もされていたと思います。
そして、左サイドのロディとレマルが良く効いていたかと。
リバプールのポゼッションに合わせてブロックは左右にスライドしますが、アーノルドは右大外に張るアイソレーションの戦術を取ることも多く、ロバートソンからのサイドチェンジを期待していましたが、ロディまたはレマルが大外もきちんと意識した動きが出来ており、アーノルドへボールが出そうな瞬間にきちんと速やかなスライドでポジションを修正し、アーノルドが起点となることを防いでいました。
この固い守備網によって、前線で張るマネ、サラーは幾度となく仕掛けようとしますが、優位な形で受けたシーンはほぼ皆無で、結果、最後までリバプールに得点が生まれることはありませんでした。
感想とまとめ
Embed from Getty Images高い規律性と集中力の兼ね備えたシメオネのアトレティコは、世界最強と攻撃力を誇るリバプールを跳ね返し続けました。
引く相手に対して、ロングボール、サイドチェンジ、ポジションチェンジによる攻勢で風穴を見つけ出してきたリバプールですが、アトレティコの強固なブロックは最後まで隙を与えず、シメオネらしいと言えばシメオネらしい、割り切りのある戦い方でもあったと思います。
敗戦したとは言え、セカンドレグはホームのアンフィールド。
クロップはまだ前半が終わった程度にしか思っていないと思いますが、何らかの修正が入るものと期待したいところです。
ちなみにヘンダーソンはハムストリング負傷で3週間の離脱とのこと。南野拓実は出番なしでした。
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