リバプール戦術分析・マッチレビュー | vs マンチェスターシティ | 2022-23第11節

昨季までの「リバプール」はどこに?

2022-23シーズン開幕節で「フラム」に引き分けると、第2節でも「クリスタルパレス」に引き分け。

第3節ではもはや格下と言って良いであろう「マンチェスターユナイテッド」にオールドトラフォードで惜敗。

プレミアリーグでようやく勝利を掴んだのは第4節の「ボーンマス」戦。
スコアは9-0。
ここまの鬱憤を晴らすような試合結果となる。

そして今節第11節の対戦相手は宿敵「マンチェスターシティ」。

ここ数年プレミアリーグはもちろんのこと、欧州サッカーシーンでも先頭を走る両者が相まみえるビッグマッチである。

リバプール」としてはスタートダッシュで躓いた格好であるが、「マンチェスターシティ」を倒さなければ当然優勝は見えてこない。

今の立ち位置からの挑戦者としての「リバプール」はどのような戦い方をしたのだろうか?

それを紐解いていこう。

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Match Information

プレミアリーグ2022-23 第11節
リバプール(10位) vs マンチェスターシティ(2位)
@アンフィールド
2022年10月16日 24:30 Kick-Off

Match Result

SCORE

リバプール 1-0 マンチェスターシティ

GOAL

‘71分 モハメド・サラー

戦術分析 | マッチレビュー

―まずはスタメンと基本フォーメンションの確認をお願いします。

昨シーズンまでのリバプールの基本フォーメーションは「4-3-3」でしたが、今シーズンに入ってから「4-2-3-1」の陣形を取ることが多く、今節もリバプールは「4-2-3-1」の布陣となりました。

クロップ監督」が何故このようなシステムを採用したのか、その意図を考える必要があります。

―マネが移籍したことが影響?

マネ」がバイエルンに移籍し、前線の大きな柱を失ったリバプールは、負傷者も相まって本来いるべき順位にはいることが出来ないのは確かです。

―そこまで「マネ」の存在が大きかったということでしょうか?

否。

かつてのバルセロナが「ポゼッションサッカー」で世界を震撼させた後、徹底的に対策されて輝けなくなったと同じように、リバプールの「速攻・ストーミングサッカー」に対して徹底的にブロックを作って抗戦するチームが多くなってきたことがシステム変更の要因です。

つまり、リバプール慣れ。

こうなると、リバプールは従来の「4-3-3」で、

  • 前線3枚を前に残し、
  • 両ウイングによる「サイドバック切り」から中盤にボールを集め、
  • インサイドハーフとアンカーでそれを刈り取り、
  • 前線に残した3枚でショートカウンターを仕掛ける

という戦術に修正が必要となります。

それはつまり、引いた相手に対して「ボールを保持する時間もスペースも多くなる」ということです。

そこで、中盤ボランチに2枚を置く「4-2-3-1」とし、クリエイティブにボールを配給できる「チアゴアルカンタラ」、空いているスペースを豊富な運動量でカバーする「ヘンダーソン」や「ファビーニョ」と言った組み合わせによって中盤を完全に支配する狙い、いや、支配というよりは「中盤からの組み立てるバリエーションを増やす」狙いがあったという方が適切かと思います。

―一方のマンチェスターシティはどうでしょうか?

マンチェスターシティの基本フォーメーションも「4-3-3」ですが、立ち位置を確認すると「3-4-2-1」となっていました。

マンチェスターシティは「ポジショナルプレー」を基本とし、優位なポジションを取ることで数的優位を必ず作り出します。

ペップグアルディオラ監督」は当然に最近のリバプールの「4-2-3-1」を頭に入れていたはずで、1トップに対して数的優位を取るために2センターバック(つまり4バック)が基本となるはずですが、両ウイングがいないため「3センターバックでパスの起点を作る意図」がありました。

それともう一つ「グアルディオラ監督」の別の意図があったように思います。

―もう一つの意図とは?

それが「極端なハイプレス」です。

シャドー(インサイドハーフ)の「デブライネ」と「ギュンドアン」がリバプールの2CBに対してプレスをかけ、ワントップの「ハーランド」が下りてくる「ファビーニョ」または「チアゴアルカンタラ」をカバーシャドー(パスコースを消す)するという原則。

この原則でパスコースを限定し、リバプールの2CBからパスが出たタイミングで「カンセロ」「フォーデン」「ベルナルドシルバ」「ロドリ」がボール回収を図ることを担っていました。

カンセロ」の運動量を活かして、4バックになることを可能としつつも、高い位置で数的優位を作る(リバプール6枚に対して、マンチェスターシティの7枚)ことを選択したのです。

そしてその後が重要なところですが、前線に数的優位を作っていることで、ハイプレスによる回収によってすぐさまゴール前で「繋いで崩す攻撃が可能であった」ということです。

4:38シーンは、まさしくこのパターンでした。

ゴメス」と「ファンダイク」にはIHの「ギュンドアン」と「デブライネ」がプレス。
ハーランド」は「ファビーニョ」を抑える。
ロバートソン」には「カンセロ」がマーク。

出しどころがない「ファンダイク」は下りてきた「ジョタ」へ楔。
しかし、ここでも「アカンジ」が網を張っており、ここでボール奪取。
すると、前線に数的人数をそろえているマンチェスターシティは「ベルナルドシルバ」→「フォーデン」→「ハーランド」と繋ないでゴールへ迫る。

―リバプールの中盤から組み立てる意図に対して、「ペップ」はハイプレスで迎撃した形ですね。

そういうことになります。
リバプールとしては中盤から組み立てたいのですが、ハイプレスによって中盤でなかなか仕事をさせてもらえなかった感がリバプールにはありました。

―これに対してリバプールはどう対応したのでしょうか?

マンチェスターシティは前に人数を割くハイプレスを仕掛けてくることが分かったので、リバプールは修正に入ります。

それが「ロングボールによる打開」です。

ビルドアップで中盤2ボランチ、両SBがマークされている中では「ファンダイク」や「ゴメス」からのロングボールが有効となります。

前線で数的優位を作るマンチェスターシティですが、当然裏を返すと後方の人数が少ないため、中盤を飛ばして「サラー」のスピードで裏を狙う修正を意図していたと考えています。

22:54のシーンもロングボールから素早い縦への攻撃が現れた場面でした。

チアゴアルカンタラ」からボールを受けた「ファンダイク」がワンステップで大きなサイドチェンジ。

エリオット」が落として、中盤フリーとなっていた「ファビーニョ」が「ジョタ」へ絶妙なスルーパス。

併せて大外を走り込んできた「ミルナー」に渡すとすぐさまクロス。

フィルミーノ」には惜しくも合わなかったが、上がってきていた「ロバートソン」の目の前にボールが流れて強烈なシュート。

シュートは惜しくも外れますが、ロングボールによるサイドチェンジから実に「8人が絡んで19秒で完結する圧倒的速さと重層的な攻撃」が見れたシーン。

―非常に中身の濃い前半でしたが、得点は入らずにスコアレス。後半はどのような展開となったでしょうか?

マンチェスターシティに修正があったようには思えませんでしたが、ハイプレス以外のところではポゼッション率を高めて、崩しによる打開を図ろうとしているように思えました。

シティのポゼッションが高まると、リバプールは「サラー」と「フィルミーノ」を2トップとした「4-4-2」のブロックを敷くことで応戦します。

―リバプールは72分に3枚替えをしますが、この意図は?

交代選手は以下の通りでした。

  • フィルミーノ → ヌニュス
  • エリオット → カルバーリョ
  • ファビーニョ → ヘンダーソン

これによって攻撃時のシステムも「4-4-2」、つまり「サラー」と「ヌニュス」のツートップとなります。

ボールを支配されつつあったリバプールは、トップ下でボールを捌く「フィルミーノ」を下げ、推進力がある「ヌニュス」を投入することで、「前線へのロングボールをよるダイレクトプレーを明確にしようとする意図」があったと思います。

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そしてその意図はすぐに結実しました。

76分。

マンチェスターシティのFKをキャッチした「アリソン」は、すぐさま前線に残る「サラー」へ低い弾道のフィード。

サラー」は「カンセロ」と入れ替わるように抜けると、そのままスピードに乗ったドリブルシュート。

見事な、そしてリバプールらしい一撃のカウンターでした。

リバプールは最後まで抜かりありませんでした。

90分には「サラー」に変えて「アーノルド」を右サイドバックとして投入することで、システムを「5-4-1」に変更。

これでアディッショナルタイムをきっちりと締めて、リバプールが勝利を手にすることになります。

―この激闘を制したのリバプールですね!ヒートマップの確認もお願いできますか?

参照:whoscored.com

やはりリバプールの重心が中盤にあることが分かりますね。

そしてちょうど「フィルミーノ」が担うトップ下エリアがぽっかり空いており、後方からのロングボールが多用されたことがわかります。

一方、マンチェスターシティ前がかりの重心で、ハイプレスを継続していたことが分かります。

―最後に何か言いたいことはありますか(いつもの流れですが・・・)?

今日は得点こそなかったですが、「ハーランド」はやはり相当な脅威でした。

マンチェスターシティの戦術をきっちり遂行しながらも、そのフィジカルとテクニックも兼ね備えているので、独力でゴールをこじ開ける力を十二分に持っています。

そのうち「戦術とは“ハーランド”である。」という日が来るかもしれません。

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―戦術分析、マッチレビューの解説ありがとうございました。次はもう少し短めでお願いします。

あとがき

あっという間の90分というのが率直な感想。
ひと時も緩慢な時間がなく、真剣でバチバチやり合っているような手に汗握る試合だった。

相手の出方に合わせて戦術を変更するというのはもはや常識となっていますが、それをきっちり遂行できるのはまた違います。

まさに欧州を代表する2強の戦いでした。

こんな試合を現地で生観戦出来たら最高なんでしょうね。

ちなみに「サラー」へのファールに対して猛抗議した「クロップ監督」がレッドカードで退場しましたが、これもこの激闘を象徴していたかと。

それだけみんな熱くなる内容でした。

過去の「リバプール戦術分析シリーズ」はこちらから♪

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