サッカーを楽しむ方法はたくさんありますよね。
選手としてプレーする、子供のサッカーを応援する、好きなチームや選手を応援する、日本代表を応援する。
そう、どれをとってもサッカーは楽しいんです。
この著者「龍岡歩」さんはサッカー経験がありませんが、Jリーグ開幕戦を観たことで、サッカー観戦にのめり込み、圧倒的な試合観戦から得た着眼点と分析力で、Jリーグの戦術分析官まで上り詰めたというレアな方です(テレビ朝日「激レアさんを連れてきた。」にもご出演されています。)。
そのレアな著者がサッカーの楽しみ方を深堀してくれました。
それは・・・「サッカー戦術」です!
「戦術って何?」っていうことですが、そんな方、是非この本を手に取って読んでみてください。
そこには緻密に計算された「戦術」があることが分かります。
本書データ
タイトル | サッカー店長の戦術入門 |
サブタイトル | 「ポジショナルプレー」vs「ストーミング」の未来 |
著者 | 龍岡 歩 |
出版 | 光文社新書 |
発刊 | 2022年2月28日 |
目次
- ペップ・グアルディオラは現代サッカーをどう変えたのか?
- 「打倒ペップ」で読み解く戦術史
- ジョゼ・モウリーニョ(一時代を築いた「スペース管理」)
- ディエゴ・シメオネ(新時代のモウリーニョ)
- マルセロ・ビエルサ(狂気のサッカーヲタク)
- ジャン・ピエロ・ガスペリーニ(プロビンチャの雄)
- クラウディオ・ラニエリ(時代を逆行する古典戦術)
- カルロ・アンチェロッティ(最高の調律師)
- ジネディーヌ・ジダン(名選手、名監督になるか)
- ユリアン・ナーゲルスマン(ハイブリッド型の騎手)
- バロンドールからひも解く「最高の選手」
- ファンタジスタとは誰のことか?
- 未来のサッカーを想像する
書評
常に人とボールが動いて、途中で作戦タイムも取れないサッカーにおいて、実は様々な「戦術」があることがわかる。
そしてサッカーにおける戦術はここ10数年で大きく進化しており、この戦術パラダイムシフトの文脈にはキーマンが存在し、彼らが如何に戦術をアップデートさせて来たのかが詳細に記されている。
オランダ代表による「トータルフットボール」が紡ぐサッカー戦術は今、そして未来までも繋がっている。
希代の天才ヨハン・クライフが築き上げた「未完の大聖堂」は、「アリーゴ・サッキ」の「ACミラン」による「ゾーンプレス」に一旦の終焉を見た。
それはまだ「ファンタジスタ」による個の主張が圧倒的に通じる時代でもあった。
当時全盛を誇っていた不世出の天才「マラドーラ」という個を封じるために考案されたのが「ゾーンプレス」である。
そして、2008年に現代の戦術史を語るうえで欠かすことの出来ない「ペップ・グアルディオラ」が「FCバルセロナ」の監督に就任すると、戦術は一気に加速する。
「ヨハン・クライフ」の意思を受け継いだ現代のマエストロは「ポジショナルプレー」として昇華させ、史上最高のチームとして名高い2010年前後のFCバルセロナを率いた。
「ポジショナルプレー」が「ボールを支配」するのであれば、スペシャルワン「ジョゼ・モウリーニョ」は「スペースを管理」することで欧州を席巻した。
そして「クロップ」による「ストーミング」は「時間を支配」することで「無秩序な状況を意図的に作り出すこと」を戦術とした。
もはや現代のサッカーは「ボール支配」「スペース支配」「時間支配」といったものに満ち溢れていることが分かる。
ここまでシステマティックなってきた中で、注目され始めたのは「マンツーマン戦術」ある。
狂気の戦術家である「マルセロ・ビエルサ」はマンツーマンで「人を支配」することでゲームを支配することを企図したのだ。
そもそも戦術が発達する前のサッカーはマンツーマンが基本であった。
高度に発達した戦術において、一周回ってマンツーマン戦術がにわかに注目されるとは非常に面白い。
そして人が人を支配するのであれば、これに対抗できる戦術は「ファンタジスタの起用」である。
マラドーナという個の天才を抑えるために組織による「ゾーンプレス」という戦術が考案されたのだが、再びここで個の「ファンタジスタ」に注目される視点に歴史のうねりを感じられずにいられない。
ひとつの戦術が発達すると、これに対抗する戦術は必ず出てくることは歴史が証明している。
そして言えることは、対抗する戦術は過去にヒントがあったものであり、それが大幅にアップデートされて新しい戦術となるということだ。
戦術はまだこれで終わるはずがない。
ヨハン・クライフによる「未完の大聖堂」は今後どのような発展を遂げるのか?
著者ならではの見解はぜひ本書にて確認して欲しい。
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